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Chapter 8

リスク理論 (Ruin Theory):破産の数学的確率

#破産確率#剰余金プロセス#安全割増#ルンドベリ不等式

リスク理論:保険会社はいつ潰れるのか?

保険会社は、将来の不確実な事故を担保にビジネスを行っています。もし特定の時期に、事故が予想を遥かに超えて発生し、保有しているお金(剰余金)が底をついてしまったらどうなるでしょうか? これを研究する学問が、まさに 破産理論 (Ruin Theory) です。

1. 剰余金プロセス (Surplus Process)

保険会社の資金は、時間の経過とともに以下のようなロジックで変化します。

1
初期資本金 ($u$)

事業開始時に保有している基礎体力です。

2
保険料の流入 ($ct$)

時間の経過とともに、一定のキャッシュが入ってきます。

3
事故の発生と保険金の支払い ($S_t$)

不規則なタイミングで、不規則な金額が出ていきます。

4
最終剰余金の確認

剰余金が 0 以下になった瞬間を「破産」と定義します。

2. 破産確率 (ψ\psi) に影響を与える要素

破産確率は単なる「運」ではなく、保険会社がどのような経営戦略を立てるかにかかっています。

  • 初期剰余金 (uu): 最初に持っているお金が多いほど、破産確率は指数関数的に低下します。
  • 安全指数 (θ\theta): 予想される損害よりも、どれだけ上乗せして保険料を受け取っているか(マージン)を意味します。
  • 支払備金の変動性: 1件あたりの損害額のバラツキが大きいほど、破産リスクは高まります。

3. 実践分析:資本金規模と破産率の関係

下の表は、同一のリスク環境下で初期資本金 (uu) を増やした場合に、破産確率 (ψ\psi) がどのように変化するかを示しています。

初期資本金に対する破産確率のシミュレーション

初期資本金安全指数 (θ)推定破産確率 (ψ)リスクレベル
1010%0.354極めて高い
5010%0.122注意
10010%0.045普通(安全圏)
20010%0.008非常に低い
50010%0.0001極めて低い

💡 教授からのヒント

破産理論は、保険会社の「支払余力比率 (Solvency Ratio)」を決定する根底となります。よく耳にする RBC比率や K-ICS といった規制は、結局のところ「会社が破産する確率を一定水準以下に管理できているか?」をチェックするための仕掛けなのです。

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