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Chapter 6

お金の値段:加重平均資本コスト (WACC) の理解

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Chapter 6. お金の値段:加重平均資本コスト (WACC) の理解

皆さん、お帰りなさい。前回、私たちはプロジェクトの収益性を評価する方法を学びました。今日は、その投資の基準となる「お金の重さ」、すなわち 資本コスト (Cost of Capital) について学びます。

経営学において、資本コストは単に「利息をいくら払うか」だけの問題ではありません。それは、投資プロジェクトが飛び越えなければならない最低限のハードル、 ==「ハードル・レート (Hurdle Rate)」== です。企業が巨額の資金を投じる際、その投資が「元が取れる」のかどうかを判断するための究極の物差し、 WACC について解き明かしましょう。


1. 資本の構成要素:すべてのドルに値札がついている

企業は主に「他人の目(負債)」と「自分の目(自己資本)」を混ぜてビジネスを行います。この二つは、コストの計算方法が全く異なります。

(1) 負債コスト (rdr_d):借りたお金の値段

銀行利息や社債利回りがこれに当たります。ここで重要な財務的メリットが発生します。それが 節税効果 (Tax Shield) です。

  • 支払利息は税引前利益から差し引かれるため、国が税金を負けてくれる効果があります。
  • ==税引後負債コスト = 利子率 ×(1法人税率)\times (1 - \text{法人税率})==

(2) 自己資本コスト (rer_e):株主の取り分

株主は債권者よりも高いリスクを負っています。そのため、より高い報酬を要求します。

  • 主に CAPM を用いて算出します: re=rf+β(rmrf)r_e = r_f + \beta(r_m - r_f)
  • 株主には確定した利息はありませんが、彼らの「期待収益率」そのものが、企業が背負う最も重いコストとなります。

2. WACC:企業全体の平均コスト

企業は負債と自己資本の両方を使用するため、これらを比率に応じて加重平均する必要があります。これが 加重平均資本コスト (Weighted Average Cost of Capital, WACC) です。

1
ウェイトの算出

自己資本 (E) と負債 (D) の時価ベースの比率を計算

2
個別コストの特定

自己資本コストと税引後の負債コストを決定

3
加重平均

比率にそれぞれのコストを掛けて合計

4
基準の設定

WACC を NPV 計算などの割引率として採用

📊 資本構成による WACC の構成要素

資本の種類記号コスト算出基準主な特徴
自己資本ECAPM / 配当割引モデルリスクが高いため、コストが最も高い
負債D市場利回り**節税効果**により実質的なコストが低い
全体価値VE + D (時価計)ウェイトを出すための分母

3. WACC の経営的活用:超えるべき壁

WACC は CFO にとって二つの重要な意味を持ちます。

  1. 投資基準: 新規事業の収益率が WACC より低いなら、その事業は行うべきではありません。調達コストすら稼げていないことを意味するからです。
  2. 企業価値評価: 将来のキャッシュフローを現在価値に換算する際の「割引率」が WACC です。WACC を下げることは、そのまま企業価値を高めることに繋がります。

==最適資本構成==:負債は節税効果により WACC を下げてくれます。しかし、負債が多すぎると倒産リスクが高まり、株主がより高い収益を要求するようになります。この二つのバランスを取る「黄金比」を見つけるのが、財務戦略の醍醐味です。


4. 結論:WACC は成長の限界線です

今日、私たちは企業が資本を調達するために支払う、見えないコストについて学びました。 WACC を知ることは、この世に「無料の金」は存在せず、すべての投資はその代価以上の利益を出す時だけ価値があることを理解することです。

「WACC は企業の階級(ウェイト)であり、成長の限界線でもあります。」


📚 セウン教授の厳選ライブラリ

  • [コーポレート・ファイナンス] - ロス、ウェスターフィールド、ジャフィー: WACC と資本構成理論のすべてが詰まった、世界最高水準の教科書。
  • [バリュー投資の極意] - ブルース・グリーンウォルド: 資本コストの観点から企業価値をいかに保守的に評価すべきかを実例で解説。
  • [バフェットからの手紙]: バフェットがなぜ資本コストの低い「優れたビジネス」を好むのか、その論理的思考に触れられる一冊。

次回は、負債と自己資本の比率がいかに企業の利益とリスクを変えるのか、 「資本構成とレバレッジ」 について学びます。