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Chapter 8

収穫のルール:配当政策と株主還元

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Chapter 8. 収穫のルール:配당政策と株主還元

長い労働の季節が終われば、収穫の時が来ます。企業にとっての収穫とは、稼ぎ出した「当期純利益」をどう扱うかを決めることです。すべての利益を新しい成長のために再投資すべきでしょうか?それとも、会社を所有する株主たちに、その富の一部を還元すべきでしょうか?

配当政策 は、単なる現金支払いではありません。それは、企業の過去、現在、そして未来について多くを語る強力なコミュニケーションツールなのです。


1. 偉大なる論争:配当は重要か?

配当の支払い方を変えるだけで、企業の価値を高めることはできるのでしょうか?哲学的には、二つの対立する意見があります。

(1) 配当無関連論 (MM 理論)

モディリアーニとミラーは、完全市場においては企業の価値は 投資政策 (いかに稼ぐか)によって決まるのであり、配当政策には左右されないと主張しました。

  • 株主にとって、1ドルの配当は株価の1ドルの上昇と同じ価値を持ちます。 ==「収穫物をどう切り分けても、全体の量は変わらない」== ということです。

(2) 手元の鳥の理論 (Bird-in-the-Hand)

多くの投資家は、「将来の不確実な値上がり益(森の中の2羽の鳥)」よりも、「今すぐ確実にもらえる配当(手元の1羽の鳥)」を好みます。

  • 高い配当は不確実性を減らし、自己資本コストを下げることができるという考え方です。

2. 還元の手法:配当 vs 自社株買い

現代では、「自社株買い」が伝統的な現金配当と同じくらい重要になっています。

還元手法の比較

手法アクション株主への影響
**現金配当**現金を直接分配即座に現金を得られるが、株価は理論上、配当分下落
**自社株買い**自社株を市場で購入発行済株式数が減り、一株当たり利益 (EPS) と株価が上昇
1
利益の発生

すべての投資案を実行した後の剰余現金を特定

2
シグナリング

成長への自信を示すための還元水準を決定

3
税務の考慮

株主が配当と値上がり益のどちらを好むか(税率の違い)を検討

4
還元の実行

銀行振込または市場での株式買い付けを実施


3. なぜ配当は「粘着的な」のか

企業は配当を減らすことを極端に嫌います。なぜなら、 シグナリング効果 があるからです。

  • 増配: 「将来のキャッシュフローに自信があるから、もっと払える!」(通常、株価は上昇)
  • 減配: 「資金繰りが苦しく、現金を節約しなければならない」(通常、株価は急落)
Note

配当の平滑化: 経営者は利益が変動しても、配当は安定させようとします。増配を行うのは、それが長期的に維持できると確信した時だけです。


4. 結論:富の分かち合い

成長機会が少なくなった成熟企業は、より多くの現金を株主に還元すべきです。逆に、成長著しい若い企業は再投資に集中すべきです。 「完璧な配当政策」とは、 ==「企業のライフサイクルと株主の期待に合致したもの」== です。


📚 セウン教授の厳選ライブラリ

  • [配当政策の実証分析]: 配当が市場の評価にいかに影響を及ぼすかを研究した専門書。
  • [バフェットの株主手紙]: バークシャーがなぜ配当を払わず、自社株買いを好むのかについての有名な解説。
  • [ウォール街のランダム・ウォーカー]: 配当利回りという要因が、異なる市場サイクルでいかに機能するかを考察。

次回は、 「デリバティブとリスク管理」 — オプションや先物を使って、混沌とした世界からビジネスを守る方法について学びます。