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Chapter 7

モンテカルロ・シミュレーション:数万通りの未来を描く

#モンテカルロ(Monte Carlo)#乱数(Random Number)#シナリオ分析#パス依存性

モンテカルロ・シミュレーション:データで作る仮想現実

すべての金融商品が、ブラック・ショールズのような綺麗な公式で解けるわけではありません。特に、満期時点の価格だけでなく、**価格が動いた経路(パス)**によって価値が決定される複雑な商品(エキゾチック・オプション)の場合、私たちはコンピュータを利用して数万回の仮想の未来をシミュレーションします。

1. なぜ「モンテカルロ」なのか?

モナコを代表するカジノの街の名前に由来するこの手法は、確率的な事象を膨大な反復試行を通じて近似的に計算します。金融工学では、株価の動きを確率過程 (Stochastic Process) として定義し、それを実行に移します。

2. シミュレーションの4段階プロセス

コンピュータが金融商品の価格を決定する論理的なフローは以下の通りです。

1
確率モデルの定義

株価のボラティリティや金利などを基に、幾何ブラウン運動 (GBM) モデルを設定します。

2
乱数生成とパス構築

数万個の正規分布乱数を生成し、株価の仮想的な移動経路を描きます。

3
ペイオフの計算

各シナリオにおいて、オプションが満期(または途中)で提供する収益を求めます。

4
現在価値割引と平均

すべてのシナリオの収益を無リスク金利で割り戻し、平均をとって現在の価格を算出します。

3. 試行回数と正確性の関係

シミュレーションの回数を増やすほど、結果の値は理論的な真値へと収束していきます。ただし、計算コスト(時間)と正確性のバランスをとることが実務上重要です。

試行回数によるオプション価格の収束(例)

試行回数が増えるにつれて誤差が減少し、理論的価格($10.45)に近づいていきます。


💡 教授からのヒント

モンテカルロ・シミュレーションは「ハンマー」のようなものです。非常に強力ですが、モデルの設定を誤ると、間違った結果を大量生産することになります。これは GIGO (Garbage In, Garbage Out) と呼ばれます。精緻な乱数生成器と正確なボラティリティの入力が不可欠な理由です。

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