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Chapter 9

ベイズ統計学入門:経験が知識になる過程

#ベイズの定理#事前確率 (Prior)#尤度 (Likelihood)#事後確率 (Posterior)

ベイズ統計学:確率をアップデートする

伝統的な統計学(頻度主義)が「コインを1,000回投げたときに表が出る回数」を重視するのに対し、ベイズ統計学は 「自分の信じ込み(確信)はどの程度正確か?」 に集中します。私たちは新しい情報が入るたびに、既存の知識を絶えず修正しながら真実に近づいていきます。

1. ベイズの定理の公式と意味

P(AB)=P(BA)P(A)P(B)P(A|B) = \frac{P(B|A)P(A)}{P(B)}

  • P(A)P(A) (事前確率): 新しいデータを見る前の私の信じ込み。
  • P(BA)P(B|A) (尤度:ゆうど): もし自分の仮説が正しいとしたら、このデータが現れる確率。
  • P(AB)P(A|B) (事後確率): データを確認した後にアップデートされた私の信じ込み。

2. 知識のアップデートプロセス

ベイズ主義者が現実世界で判断を下すプロセスは以下の通りです。

1
主観的な事前確率の設定

過去の経験や直感に基づき、初期の確率を付与します。

2
新しいデータの観測

現場で発生する実際のデータ(根拠)を収集します。

3
ベイズ更新の実行

公式を通じて事前確率を事後確率へと変換します。

4
繰り返しの適用

今日の事後確率は、明日の新しい事前確率となり、循環します。

3. 頻度主義 vs ベイズ主義の決定的な違い

2つの統計学的な視点の比較

区分頻度主義 (Frequentist)ベイズ主義 (Bayesian)
確率の定義無限に繰り返した際に発生する頻度個人的な信じ込みの度合い(不確実性)
母数 (Parameter)固定されているが未知の値確率分布を持つ変数
データの役割唯一の判断根拠既存の信じ込みを更新するための手段
メリット客観的で標準化された手続き少ないデータでも分析を開始でき、柔軟性が高い

4. 実戦事例:仮想の癌診断テストのアップデート

事前確率が1%である希少疾患の診断キットの結果を、ベイジアンの観点からアップデートした例です。

癌診断の結果に伴う事後確率の変化

陽性反応が一度出たときよりも、二度繰り返して陽性が出たときの方が、確信(確率)が急激に大きくなります。


💡 教授からのヒント

スパムメールのフィルターや自動運転車の判断アルゴリズムは、すべてこのベイズの定理に基づいています。「今センサーに捉えられた物体が人間である確率を常に更新せよ」という命令です。私たちの脳が学習する方法に最も似ている統計学でもあります。

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